• 2014年12月28日
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『百人一首ワンダーランド』を語る。

五味太郎アネックス事務局・オクダです。
今回は、先日発売された五味さんの渾身の力作!『百人一首ワンダーランド』について、その創作秘話を大いに聞きました!

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ま、そもそもは今回の百人一首の製作には直接関係ないんだけど、オレ、俳句に興味あるでしょ。俳句をやってると自然と和歌にまで行き着くんだよな。俳句が「五・七・五」なら、和歌は「五・七・五・七・七」。で、なぜ後ろの「七・七」を飛ばして俳句になっていったのか、というところに一番関心があってね。
たとえば、江戸中期までは、「五・七・五・七・七」を抒情的に歌い上げるんだよね。しかし歴史には、時代のウェイブみたいなものがあって、この抒情的な部分を削って、もっとキリッと歌ってみようじゃないかという転換期があったのではないかと思うんだ。たとえば、ルネッサンスに代表されるように、絵画や音楽の世界にも変革があったようにね。で、この「七・七」が取れて、俳句になっていった過程というか、その変化に非常に興味があったのね。
あと、もうひとつ興味があって、以前は皆で歌を詠んでいたんだよね。和歌もそうだけど、連句といって「五・七・五」を詠んだら、誰かが「七・七」を歌う。つまり、俳句の時代の前に連句があった。で、面白いのは、和歌は皆でワイワイやるお座敷芸なんだよ。まあ"芸"って言ったらおかしいかもしれないけれど、要は室内で歌って遊んでたんだよ。そのうち時代は流れて、屋外に出て歌う人や一人で歌う人も出てきた。そういった歌い方の変化に着目しても面白い。

さて本題の、なぜ百人一首か、というと俳句の親的存在というかその土壌を形成していた存在というか、和歌という世界が膨大に広いわけだよ。それで、あまりにも広いがために、あえて百人一首について絞って考えてみるのも面白いかな、と。しかし、俳句との違いを感じたのは、俳句の対象は一般庶民が多いんだよね。商人とか町人とか。でも百人一首は、庶民のことを歌ってはいない。絵画の歴史にたとえるならば、印象派の前の絵画は、宗教画または貴族や王様などのお金持ちが絵描きを雇って絵を描かせるというスタイルで、そういうのには正直興味ないな、と思ったりもしたけれどね。百人一首の世界も天智天皇にしろ源頼朝にしろ、為政者がお遊び的に詠んだ歌は、あまりまじめに考えてみるものでもないな、と無意識に思っていたのかもしれない。ただ、あえて言えば、藤原定家が選んだ小倉百人一首については知らないわけではなかったし、その百人の詠み人すべてが、天皇をはじめ上流階級などの、社会構成の中では特殊な立ち位置にいる不思議な存在の人々で、その彼らが歌を詠んでいたという時代の風景を考えるのも面白そうだったし、もうひとつの理由は、サントリー美術館などにある絵巻とかを見ていたら面白くって。はじっこで人が斃れてたり、一方で馬が走ってたりと。メインのテーマはその時代を表しているんだろうけど。で、こういうカタチで百人一首の世界を扱ってみたらどうだろうか、と思ったわけ。

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時代の風景を見るのが面白いって言ったけど、そもそも社会ってどういうふうに構成されているのかなあっていうのは興味あるよね。社会ってどういう風にできているのかな、と。そうすると、初めから社会の上に立ちたいという人、社会でのあり方自体を考えている人、社会での立ち位置を考えずに社会人になってしまった人、はたまた為政者になれと言われてなってしまった人々、そういった人たちが構成している世の中の風景を見ていくと、この約千年前の百人一首の時代もあまり変わらないんだなあ、と思う。
以前、宗教学者の山折哲雄先生と社会論や歴史論を話していた時に、モーゼの十戒の話が出てね、面白いのはその前の時代なんだということでね。というのも、なぜモーゼが「汝、姦淫するなかれ」なんて決まりを作ったのかと考えると、十戒を作る前の社会は乱れに乱れていたからでしょ。聖徳太子の十七条の憲法もそう。「和をもって貴しとなし」、つまり"みんな仲良くしなさい"、なんて言ったのは、決まりを作らざるを得ないくらいに世の中が乱れていたからでしょ。要は、世の中が乱れると、決まりを作って治まって、しばらくするとまた乱れた世の中がやってきて、またモーゼや聖徳太子のような為政者のような存在が現れて...。そういったことを繰り返す時代の流れの中で、百人一首も詠まれてきたんだよな。
で、百人一首の中身だけど、これが意外とつまんないことばかり歌っているんだな。でも、翻って、これが日本(大和)の風土だと思う。自然を愛で、夜更かしをし、月に見とれて...。で、だいたい男は女のところに通い、女は男を待っている。でも結局は会えないことを嘆き、袖を濡らして歌を詠む。ま、会えちゃったら歌にならないわけで...。「今日は来ちゃいました」なんてサプライズがあっても面白いけど(笑)。
で、こんな暇そうな歌を謳っていた人たちって、実際何してたんだろうって思うよね。でも一歩引いて考えると、こういう上流階級の人たちにこんな歌を謳わせていた社会って、どんな社会だったのだろうって想像するのが面白い。しかも、こういう側面からアプローチした百人一首の研究ってないんだ。ということは、オレが好きなように解釈して、百人一首を気ままに楽しんでしまっても大して問題にはならないんだよね。なんたって、千年を超えてる遠い昔の話なんだから。
まあ、とは言いつつもオレなりに読んだ感想としては、みんな苦労してたんだなあ、とも思ったね。で、それぞれみんなうまく生きていたんだろう、と。また、当時の政治や経済の状態、それぞれの身分などは、想像するしかないよね。おそらく相当の経済力があって生活してたんだろうけど。 あと、それぞれの歌でオレなりに楽しんだのは、たとえば「いにしえの 奈良の都の 八重桜 ......」なんていうのがあって、こちらが"いにしえ"を想っているのに、"いにしえ"の人にも"いにしえ"があってビックリしたり、「君がため 春の野に出でて 若菜摘む わが衣手に 雪はふりつつ」という歌は、"若菜"と思って若草色の春をイメージしていると、"雪はふりつつ"と冬の名残りが出てきて。これもビックリするほど、絵的で美しい歌だよね。
ほかにも、作り手側から考えてみたりね。句や歌そのものを詠む気持ちを想像したり、探ってみ足り...。そして読んで少し時間が経った後に、ふと、そうだよなあ、なんて共感してしまう面白さとかね。(了)


※東京書籍 担当編集K氏より...
印刷の現場では、見本からオーラが出ていて、話題騒然だったそうですが、制作過程の複雑さもここ最近では一番たいへんだったらしく、そういう意味でも話題騒然だったようです。
それでも、印刷も含め、デザイン、編集スタッフがポジティブに動いてくれたのは、五味先生の人柄と人望と才能ですね。
ともかく、いろんな方向から見て、実によくできています。絵本であり、実用書であり、教養書であり、芸術書であり、玩具でもあります。まさに一家に一冊のパッケージです。


■百人一首ワンダーランド
・出版社 東京書籍
・本体価格 3,500円
・発売年月 2014-11-29
・内容の詳細は...
https://www.tokyo-shoseki.co.jp/books/80880/

・商品の購入は...
Amazonへリンク

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