• 2012年11月 7日
  • 4. 発言・エッセイ

トークライブ抄録(1)~弁護士・清水勉氏との対談

五味太郎アネックス事務局・オクダです。
昨年夏から今年4月にかけて、五味さんのプライベートスタジオでほぼ毎月開催された
「五味太郎トークライブ」の模様をお伝えしていこうと思います。

今回は、今年1月27日に開催された、弁護士・清水勉氏との対談をまとめてみました。
特に、震災から10ヶ月経った時点での対談には、洞察に優れた2氏の意見が満載であり、とても聞き応えのあるものでした。


■「がんばろう日本」という合言葉について考えてみる。

1.27talk live.jpg

(五味さん)
このトークライブ、昨年の夏から毎月開催しているんだけど、続けている理由のひとつとして、東日本大震災をきっかけに、いろいろと発言したい人、表現したい人が多いんだなと感じたんだよね。で、誰もが発言できる要素をこのライブにも組み込みたいなと思っているところもあるんだ。

(清水弁護士)
へえ、ちゃんと理由があったんですね。気分で開催しているんだと思った(笑)。

(五味)
前回のテーマが「言葉は機能しているか?」というものだったの。言葉ってそもそも何なのだろうって。で、清水さんは弁護士やってて、裁判でも言葉ってものは、とても大変な存在だと思うけど。

(清水)
そりゃもう、日本語ってとんでもなく難しいですし...。

(五味)
でね、話は震災のことになるんだけど、いま「がんばろう日本」とか「絆」という表現が巷にあふれているじゃない。たとえば、テレビ見ていて、スポーツ選手のヒーローインタビューでも「被災者の皆様を勇気付けられたらうれしいです」というような言葉が決まり文句のようになっているよね。 こうなっている言語の状態ってどういうことだと思います?

(清水)
うーん。毎年、年始に事務所でニュースを発行しているんだけど、父の死をきっかけにここ3年は身近な人の死をテーマにしていました。新年早々に死をテーマとは何事かと批判的に見られるのかと、最初はびびっていたのですが、これが意外とかなり受けて。もう死について書くのはやめようと思っていたときに3.11の大震災がありました。
私は大学が仙台で、妻も仙台なので、宮城県内には親戚や友人がたくさんいます。中には1ヶ月以上連絡が取れない人もいて、心配していました。結果的には知り合いは全員無事でした。亡くなった人たちには申し訳ないけど、「生きていてくれてありがとう」と思いました。
そんな時期に、マスコミの≪絆≫キャンペーン。世の人々も一斉にあっちこっちで募金、募金。このノリはまるでイベント。苛立ちを事務所ニュースに少し書こうと思ったら、これがなかなか書けなくて・・・。
大震災から1ヶ月くらいして津波の被災地に行きました。津波が街並みを引っ掻いていった痕は凄まじかった。だれでも、被災地に行ってみればいい、そうすれば、そこで自分なりに感じるものがあるはずです。震災直後からそう思っていました。
ところが、ガソリン不足問題が解決した後も、「被災地を観に行くべきではない」と言われてましたね。被災地、被災者は見世物じゃないということなんだろうけど、私は見世物だと思う。生涯で2度と観られない、自然が仕掛けた、生涯記憶しておくべき見世物だと思う。「がんばろう日本」なんて合唱にのせられて、募金さえすれば、「はい、おしまい」なんていうのは絶対にダメ。

(五味)
やはり、テレビなどのメディアを通して被災地を見るのではなく、個々が自分の眼で現地を見ることは大切なのかな?

(清水)
文字や写真、映像というだれかが切り取った事実ではなく、現場に立って自分で体全体で感じることって、重要だと思います。
一番の落差は、新聞やテレビでは凄まじい死の実感が伝わってこないことです。バラバラになった死体どころか人の形をした死体さえない。マスコミには何月何日時点で何人の死亡を確認、みたいな数字しか出てこない。ひとりひとりの人の死を実感させるものがない。
津波の被災地の人たちはだれもが身近な人々の死を目撃し、死臭を嗅ぎ、冷たくなった体に触りという、異常体験をさせられている。死というものを全く考えたことのない小さな子どもでも、です。
それがどれほどの衝撃になっていることか。現地に行ってそれを言葉で聞かなくても雰囲気を体感することは、自分がこれから何をすべきなのか、何が出来るのかを考える上で重要だと思うんですよ。

(五味)
今、清水さんの話を聞いていて思うことがあるんだけど、ふとしたキッカケで数年前からラテンアメリカのことが気になってね。
たとえばガルシア・マルケスなどを読んでいると、少しオーバーだけれど死体の臭いや血の臭いの表現が結構出てくるんだ。しかも生々しく。
しかし、南米の対極にある北の文化、つまりヨーロッパなどの欧米文化は、こういった血生臭い表現をあえて臭わないように、見ないようにし、無味無臭にしてしまったのではないかと思うことがある。
で、この19・20世紀にこの文化に影響を受けた我々も、人が死ぬこと、または血生臭い出来事は別次元の話なんだと思い込んだのではないかと・・・。しかし実際に今回のような、つまり一度に多くの人々が亡くなるという想像を超えた災害に遭遇した場合、"通常の理解"の範疇を超えているので、我々の思考は停止してしまう。そして、思考が停止した状態で、でも焦って何か言わなければと考えたときに「がんばろう日本」という合言葉が出てきてしまったんじゃないかと思うんだ。
地震・津波の映像を見て、しかし死体は一切映っていないけど理解したつもりになったときに、中間の言葉がすっぽり抜けた、こういった曖昧な言葉が出てきてしまうのではないだろうか。
そもそも「死」というものは、もっと身近にあったはず。その「死」をけがれているものとして、現代人は日常の生活から忘れ去ろうとしているよね。地震、津波があって、多くの人が亡くなって、(そして特にテレビでしか現地を見ていない人は)その状況をそのまま受け止められず、また、その状況を補うための感情としての言語も表現できず、その表現の時間が止まったままでパニックになってしまっている状態だと思うんだ。
それで今、変わりに当たり障りのない言語ができつつあって、つまり「みんなのためにがんばります」とか、突き詰めて言うと「私も(震災のことを)気にしているのよ...」ということを表現する言語ができつつあるのではないだろうかと思うんだよね。
(続く)


■清水勉氏プロフィール
1953年埼玉県生まれ。弁護士。東京弁護士会所属。
薬害エイズ訴訟や住基ネット問題などを通じて日本の行政と渡り合ってきた。
五味太郎とは『さる・るるる one more』を小さな書店で立ち読みし、
「これこそ人生だ!」と感じたことがきっかけで、出会ったという。
近年は、現場の警察官のための職場改善を目的とする市民活動にのめり込んでおり、
「明るい警察を実現する全国ネットワーク」の代表をつとめている。
警察官やその家族の相談にのりつつ、警察の被害者のために警察相手の訴訟や交渉、
情報公開請求などに積極的に取り組んでいる。
座右の銘 : 実感!


■(PR)絶賛発売中!
白ゾウflash.jpg.jpg

季節の模様替えに。人気の直筆サイン入りクロック。
《人気のクロック・ゾウが3色選べて好評発売中! 限定直筆サイン!》 人気の五味太...
夏の版画特集
アネックス事務局・オクダです。 今年も特集! 夏にピッタリな五味太郎さんの夏の版...
フィード
リンク
GOMI TARO ANNEX

商品の販売について
当ブログ運営
五味太郎アネックス事務局
(オフィス・シード)