- 2011年2月 1日
- 新刊について
新刊「砂漠と鼠とあんかけ蕎麦 ~神さまについてのお話」ができるまで(2)
◎好評発売中!五味太郎アネックスショップ
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五味太郎アネックス事務局オクダです。
前々回に引き続き、五味さんの新作「砂漠と鼠とあんかけ蕎麦」ができるまで。今回は、五味さんがこの本を作ることになったキッカケをより深く聞くことができました。
(挿し絵:「MAKE A PICTURE」より)
(五味さん)
経済や政治のことでも、たとえば家庭・教育問題のことでも、何か起きると、すぐに専門家の意見を参考にしてしまいがちなんだけど、これはあまり好ましいことではないと思う。なぜなら、経済も政治も教育も、簡単にはお金のこと、暮らしのこと、家庭や学校のことであり、つまりは自分のこと、個人の問題なので、他人の意見に耳を傾ける前に、まずは自分で考えて整理してみることが大切だと思うんだ。「分からないことはスグに専門家に聞こう!」といった流れは、かえって思考停止状態にさせてしまうからね。

で、宗教も同様で、ずっと長い間、神さまについて疑問を持ち続けてきたわけだけど、神さまっていう存在は、歴史や専門書で調べるよりも、まずは自分にとって何なのかということを考えるのが大事なんだよね。そして今回、幸運にも宗教学者である山折哲雄先生に巡り会い、"専門家の意見におまかせ"という次元ではなく、個人の問題として捉える視点をいただいたという点で、本当に良かったと思っている。
―そもそも神さまや宗教について、五味さんはどの程度関心を抱いていたんですか?
神的なるものというか、そういった存在を折りに触れてずっと気にしていたように思う。たとえば、旅行先でどこに行っても、教会や寺院を目にするじゃない。ヨーロッパの教会を見ても、スリランカの寺院や中国のお寺も。明治神宮も例外ではない。神さまを祀ったり、偉い人や為政者を祀ったりしている。そういった宗教的空間を見るたびに「神って、いったい何なんだろう?」と思ってきた。そしてあるとき、神さまや宗教のことを気にしているという自分が気になったんだ。
そしてこんな疑問が還暦を超えてから大きく膨らんできたので、偶然にも山折先生のことを知り、神さまについて尋ねてみたんだ。そうしたら先生は、宗教のあり方を冷静に分析し実感してきた方として、個人にとっての"信ずる宗教"と"感じる宗教"の存在を教えてくださった。この話には、とても納得がいったんだ。自分の宗教観は、今まで信ずることや感じることを曖昧にしていたから、神さまについての漠とした疑問を持ち続けていたし、信ずることが希薄で、どちらかといえば"感じる宗教"をそのまま感じていたから、ずっと気になっていたんだなぁ、ということに気がついた。そして非常に整理がついた。
―長らく疑問に感じていた宗教の疑問について、充分に納得できそうなんでしょうか。
いやいや、これは一生の問題だと思うんだけど、今回はその第一弾を探ってみたということかな。これからは、宗教の持つ側面を探っていった方が分かりやすいのではと思っている。その側面というのは、たとえば人間の脳とか身体の話かもしれない。おそらく宗教に関する科学的データを収集しても意味がないと思うし、むしろ人間の脳や身体に神的なるものが内包されているんではないか、ということを探っていった方が意味があるんじゃないかと思っている。 そしてこの脳や身体を探ることは、今がいつで、ここはどこで、自分は誰なのかといった3つの命題の、誰も解いたことのない疑問を探っていくことにつながるのかもしれないかもしれないと思っている。

―五味さんの絵本づくりと離れてしまっているように聞こえますが。
いやその逆で、絵本をつくる作業はこういった命題を探りつつ、その各論を見出そうとしていたのかもしれないな。そして、あえて不遜な言い方をすれば、まだまだ探り続けられると思っているし、楽しめると思っている。オレにとって命題を探るカタチのひとつが、絵本をつくるという行為だったということなんだ。
おそらく、「自分が何者なのか」という命題を誰しもが抱くと思うんだけど、この命題に対して、多くの人は自分の最も得意なことでアプローチしていくんじゃないのかな。ボクサーは殴り合うことで、サッカー選手はゴールネットを揺らすことで、つまり、まさに"神々しい"といわれるプレーを追い求めていくことで、自分の存在を探っていく、神の存在に近づいていくんじゃないのかなあ。
―今回の山折先生との本は、五味さんの中でどういう位置づけになりますか?
今回の本は、還暦を越えてからの作業で出来上がった本だけど、間違いなくエポックメーキングとなる本だと思っている。おそらく還暦を越える付近で、自分の中で何かがあったんだろうな。何かが。そして今後自分の中で、どういう風に位置づけられるかは、まだ分からないけれど、気になる本になることは間違いないと思うよ。(了)
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